7月の犯罪

 

高層アパートの家宅捜査で、 71 件の容疑で 2 名逮捕、警官が負傷、 31 分署

 

7月27日付市警ニュース

( Japanese Social Services よりの情報提供)

 

7 月 24 日日曜午後 11 時15分頃、チョークファーム通り 180 番地界隈で銃声がしたとの通報が 31 分署に入り、警官が出動した。

事件の概要は:

現場に到着した警官に向けて、建物上層階のバルコニーからビール瓶数本が投げつけられた。警官1名の頭部にビール瓶が当たり、脳震盪を起こし、この婦人警官は、生命にはかかわらない傷のため、ハンバーリバー病院のフィンチ分院に運ばれた。

制服警官による苦心の捜索により、瓶を投げたと見られるアパートが発見され、警官がアパートに入り、室内にいた 2 名を逮捕した際に、床に置かれたショットガンと弾薬が発見された。

7 月 25 日月曜午後 1 時 23 分頃、 31 分署重要犯罪課の係官がチョークファームドライブ 180 番地アパート 2109 号室の家宅捜索を行った。

以下を含む、大量の火器や弾薬、麻薬が押収された。

  • 2 連発のショットガン
  • コブレイ・マック- 10 の自動銃
  • 銃口9mmの拳銃
  • 改造されたスターターピストル( 22 mm口径弾が発砲可能)
  • クロスマン社製エアピストル
  • 防弾服 3 着(内ひとつは軍用)と毛糸の覆面帽
  • 9 mmの弾丸 41 個
  • .22 カリバー弾 124 個
  • .380 の自動銃用弾丸 9 個
  • .25 カリバー弾丸 18 個
  •  

    昨日 (7 月 25 日 ) の発砲事件に関するブレア総監の声明

     

    7月26日付市警ニュース

    ( Japanese Social Services よりの情報提供)

     

    「昨晩の一連の事件は私自身、市警、またトロントに住む人々にとって、無視できないものだ」とブレア総監は語った。

    市内の異なる場所で、 5 件の発砲事件が発生した。事件の被害者は警察がリストしていた人物であり、現時点では、これらの発砲事件は相互に関連して起きているのではなく、報復のために行われたと考えられている。被害者の多くは捜査に非協力的で、他の被害者も事件の解決に役立とうという姿勢が見られない。命にかかわる傷を負ったものはいなかった。

    うち1件の 19 歳の男性被害者は、 5 月 8 日の日曜日にバーチマウント通りで発生した発砲事件にかかわったと見られ警察が探していた人物だった。彼は武器を用いた暴行と、危険な武器を所持していた容疑で逮捕された。法廷への出廷日時は未定である。

    先週発表された全国統計でトロントでの犯罪発生率は全般としては下がったことが確認されている。これは希望が持てるニュースであり、トロントでの発砲事件通報は増えていない。しかし、時折小数の若い人々が、人が多く集まる場所で銃をもてあそぶことがあるのをブレア総監は懸念している。

    総監は「銃およびギャング対応専門官を含む警官を、事件が起きた 5 箇所にすでに追加配置した。警察はあらゆるコミュニティーに属する人々と協力して、この一連の暴力行為を止めることを約束する。警察官が行うべき事は明白だ。目につくパトロールを行って治安を守り、捜査に役立つ機会を一切逃さないことである」と述べている。

     

    「皆さんと協力し合うことが解決につながる事はトロントで十分に証明されている。昨日の発砲事件で影響を受けた地域に住む人々は、お互いに協力して市民の安全を守ろうと私が決意を決めたのと同じように、決意してくれていると思う」とブレア総監は述べている。

     

    JSS情報分析

     

    25 日 ( 月曜日 ) に連続して起きた発砲事件に関して総監が 26 日に記者会見して述べたのが掲出した記事である。

    その後も銃による事件が頻発し、先週日曜日に、射殺された 2 人の男の追悼式で発砲事件が起こり 1 人が撃たれ傷を負って以来、金曜日にかけての発砲事件は 10 件に達した。

    事態はそれにとどまらず、土曜日から日曜日( 31 日)にかけて銃による 3 件の殺人事件が起きている。この 3 件に関する報道からは、総監が指摘している「遺恨による銃撃」とは異なる状況が推察される。

    カナダは米国に比べて保有されている銃の数は少ないが、一説に言われる全国で 7 百万丁は日本に比べて桁違いの数であると同時に、総監が指摘する「若者」の手が容易に届く状況でもある。

    犯罪に利用される銃器の数は総数に比べると「九牛の一毛」と言ってよいほどのものであり、銃器の大多数は違法ないしは危険な使用はされていない。ところがそのほんの一握りの「悪用される」銃器によって市民の安全が犯されていることが問題だ。

    特に白昼、ないしは人が集まる路上での発砲事件や流れ弾被弾のケースでは、被害を避ける手立てとして、

    何か疑わしい状況を感じたらすぐにその場を離れる、

    発砲などの事態に遭遇した場合近くの物陰に身を隠すないしは地面に伏せる、

    などの方法があり、受身ではあるが瞬時に対応する必要がある。

    また家宅侵入などでは銃器所持の危険が常にあるので、

    不用意な抵抗は避け、相手の人体を記憶し、書き出すと共に早い時期に警察に通報する

    ことが重要である。

    なお総監の声明は、昨年発砲事件が頻発したときに、当初解決のための市民の協力、情報提供が思うように得られなかったが、警察の努力の結果事態が好転し、コミュニティーぐるみの再発防止運動が進められた事が背景にあるようだ。

    別掲の記事はこの記事が発表された翌日に起きた事件で、いかに銃器が保有されているかを表す例として参考までに訳出した。

     

    宝くじ詐欺が戻ってきた

     

    7月21日付ピール郡警察ニュース

    ( Japanese Social Services よりの情報提供)

     

    7 月 7 日木曜日、ブランプトンの 58 歳の男性が、以下のようにして当たり宝くじ券の持分を買ったと信じこまされ、 $11,000 を騙し取られた。

    ブラマレー市役所の駐車場で被害者に第一容疑者が近づいた。容疑者は外国からきており、家族の病気で至急帰国しなければならないと話した。話をしている間に第二容疑者が会話に加わり、第一容疑者が、当たり宝くじを持っているが個人認識情報が不足しているので現金化できないと語った。その上で、賞金を半分わけにするから $30,000 で当たり券を買ってくれないかと持ちかけた。第一容疑者はその金で帰国すると語った。

    三人は第二容疑者の車まで行き、第二容疑者がオンタリオ宝くじ・ゲーム会社( O.L.G.C )に電話するように見せかけた。その上で電話を被害者に渡し、電話の先の別の人物が宝くじは $2.5M に相当すると告げた。

    第二容疑者は全員を、被害者が当たり券を買うための現金を手に入れるためにモールの銀行に連れて行った。彼はしばらくして $10,000 が入っていると思われる茶色の封筒を持って戻った。三人はその後リサ通りの銀行まで行き、前と同様にして第二容疑者は $5,000  をもって戻り、これ以上現金が出来ないと語った。

    被害者が銀行からの貸し出しは難しいと言うと第一容疑者はシティーセンターの電気器具店でクレジットカードを手に入れるように奨めた。被害者は言われた通りにし、クレジットカードが手に入ると容疑者 2 人はそのクレジットカードを使って合計 $5,000 を越える買い物をした。

    その上で容疑者たちは被害者に、トロントの O.L.G.C. に行く前に当たり券のコピーを作りたいと言い、ミシサガのダンダス通りで車を止めた。

    第一容疑者が病気を装ったので第二容疑者と被害者が車を降り、店に向かった。被害者は 1 人で店に行きコピーを頼むように言われ、彼がコピーをとって車に戻ると容疑者たちは消えていた。

    被害者は O.L.G.C. に行き、当たり券が偽物であるため券を没収された。

    O.L.G.C. のロブ・ズーフェルトは「 O.L.G.C は当たり券の確認を電話ですることはありません。確認を必要とする人は O.L.G.C. に出向くように言われます。」と語っている。

    ピール郡警察詐欺課のベッツ刑事は「 11 年 間ここに居ますが、濡れ手に粟のような話は絶対に起こらないと言えます。そういった話が出たときには、皆さんは自分が犯罪に巻き込まれていることを意識して欲しいと思います。」と語っている。

    第一容疑者はスペイン人の男性で 25 ~ 27 歳、身長は 5ft10~11in( 約 178~180cm) 、 190~200lbs( 約 85~90kg) 、こい褐色の短髪、顔にヒゲはなく、スペイン訛りがあった。

    第二の容疑者はギリシャ人の男性で肌色がオリーブ色、 35 ~ 39 歳で、 5ft8 ~ 5ft9in (約 172 ~ 175cm )、 180 ~ 190lbs (約 75 ~ 80kg )薄い褐色の髪、薄い口ひげがあり、眼鏡をかけていた。

    車は最新型の青い SUV または Van で、乗客用ドアは一つだ。

     

    JSS情報分析

     

    日本で起きている「家屋修理」や「オレオレ」詐欺を例に挙げるまでもなく、当地でも詐欺犯は常に手を変え品を変えて悪事を働いている。

    この事件はその一例にすぎないが、数人が共謀して行っている点、被害者を信用させる手口など手が込んでいる。

    人を信用できないと言う事は悲しいことだが、記事で警察が発言している通り事態が金儲け、特に濡れ手に粟の金儲けである場合 100 %疑うべきである。

    一方、取り込まれたことを恥じて警察に通報しない、人に話さない事は、結果として詐欺犯をのさばらせてしまう結果ともなりかねないと考えると、被害の回収はともかくとして事態を広く、正確に世間に伝えることにも心したい。

     

    ムースとの衝突で州警の警官が死亡

     

    7月20日付州警ニュース

    ( Japanese Social Services よりの情報提供)

     

    オンタリオ州警察職員は、勤務中に単独車両事故で死亡した同僚の警官の死を悼みつつ、同乗していた警官の回復が早いことを祈っている。事故は警官が電話通報に応じて出動中、ムスコカのグレーブンハーストと、ムスコカ湖町のバラの中間、# 169 号線のウオーカーポイント通りでムースに衝突したために起きた。

    今朝午前 2 時少し過ぎ、州警察ブレースブリッジ派出所の巡査 2 名が西バラで起きた家庭内のいさかいに関す電話通報で出動した。 2 名の警官は州警察のパトカーでムスコカ# 169 号線を西に向かって進行中に、道路を横断しているムースに衝突し、ムースに衝突した後車は南側の土手で止まった。事故当時の天気は霧で、事故の時点でムースは道路上に居た。

    運転していた警官は現場で死亡した。同乗していた警官は救急車で南ムスコカ病院に運ばれ、後に重傷のため空路トロントの聖マイケル病院に移送された。

     

    JSS情報分析

     

    このニュースでは 2 日後に出動中の別の警官がムースに衝突し重傷を負ったと報じられている。

    勿論警官だけが衝突しているのではなく、 2000 年度連邦運輸省の統計では大型動物との衝突事故発生件数は、以下のようになっている。

     

          オンタリオ カナダ

    死亡      7      23

    傷害     585   1877

    物損    10503  28820

     

    大型動物との衝突では、体重が重いムース (300kg 程度 ) との衝突が特に危険である。死亡事故にならないまでも、傷害事故は珍しくはなく、物損事故も大きな損害につながる。

    大型動物が道路を徘徊するのは春浅い時期と晩秋が多いが、他の時期も油断できない。道路わきに水がある場合、融雪のための塩分が含まれることが多く、それをねらって動物が出没すると言われている。

    特に夏季に遠出をする場合比較的人通りの少ないハイウエイを利用することが多く、大型動物に出会うチャンスも多いと考えられる。ただし市街地に近いと言っても油断は出来ない。筆者はトロント郊外のオーロラに住んでいるが近くで鹿との衝突事故はまれではないし、友人の 1 人はミシサガ市の住宅街で鹿と衝突した経験を持っている。またこの時期、動物たちは気温に敏感で夜間移動することが多く、したがって夜間の運転は特に要注意である。いつでも止まれる速度を維持し、ライトは可能な場合上向きにする、前面ガラスの視界を確保しておくなどが重要だ。なお、ムースは鹿とは異なり、夜間でも目が光らない。

    大型動物が通り道にしているところ、ないしは出没が頻繁なところには注意表示がある場合が多い。また見通しのきかないカーブ、障害物 ( 岩など ) の近くでは速度を落として万一に備えるべきだ。

     

    スクゴグ湖にて 1 名溺死、 1 名行方不明

     

    7月19日付ダーラム郡警察ニュース

    ( Japanese Social Services よりの情報提供)

     

    昨日、スクゴグ湖で親族でボート遊び中の事故のため、リッチモンド在住の男性が溺死し、エトビコ在住の男性が行方不明となっている。

    7 月 18 日午後 4 時 20 分頃、ペリー港マリーナから北へ 3km 程にあるスクゴグ湖で、借り出された 2 隻のボートで事故が発生したと警察に通報があった。 911 通報によると、 2 人の男性が一族の者を救助しようと水に飛び込み、1人は意識不明で、もう 1 人は行方不明になりました。警察によれば、事故当時、一族の 12 名が魚釣りをしており、 2 隻のボートは互いにに繋がれていたと言う事だ。最初に、リッチモンドヒル在住の 25 歳の男性が救命ジャケットを着用して水に入りましたが水に流され始め、そこで 31 歳の従兄と 44 歳の叔父が男性を救助しようと水に飛び込んだ。飛び込んだ 2 人は救命ジャケットを着用しておらず、 44 歳の叔父は水面下に沈んでしまい、その後姿が確認されていない。

    スクゴグ郡の消防署とダーラム郡の救急車が現場へすぐに向かい、意識不明の男性を乗せた長さ 14 フィートのアルミ製のボートを発見した。救急隊員はリッチモンドヒル在住の 31 歳の男性に人口呼吸・心肺マッサージを施しレイクリッジ病院ペリー港支所へ移送したが、リッチモンドヒル、ケイトランド通り在住のモハメッド・アシム・カーンさん 31 歳は死亡が確認された。

    警察及び消防署は、湖の捜索を続行しており、 2 人目の男性は水中で行方不明であると発表した。今朝も郡警察水上部及び所属ヘリが 44 歳の男性の捜索を継続している。

     

    訳者注;翌日のニュースで行方不明の男性は遺体で発見されたことが報じられた。

     

    JSS情報分析

     

    日本の夏でも水による事故は少なくないが、カナダも例外ではない。掲出した記事は湖で発生したものだが、当地では住宅にプールがある場合が少なくなく、特に小児の水死事故はここで起きるものが多い。

    新聞報道 (Globe & Mail 、 7 月 21 日 ) によると、幼児の死因で溺死は自動車事故に次ぐ 2 番目に多いという。

    カナダ全土で毎年ほぼ 500 人が溺死し、その半数は小児である。また約 3,000 人が一命をとりとめる。小児の場合、一命は取り留めたものの、 4 人に 1 人はその間の酸素不足による恒久的な脳障害を受ける。

    掲出記事の場合、緊急事態の発生に伴い救助のために飛び込んだことで、低い水温が災いして悲劇につながったと想像される。溺死の原因で最多は低水温による呼吸困難、機能低下である。

    プールにおける小児の事故では、溺死者の 75 %は泳いでいたのではなく、たまたま水の近くに居たために起きている。小児が水の危険にはお構いなしに、きらきらする、面白そうな水に近づいたのである。

    小児の事故を防ぐには、

    監視を一秒たりとも怠らないこと。

    金網、自動的に閉まる扉などでプールを囲い、監視なしには近づけないようにすること。

    泳ぎを教えること。

    水の近くで遊ぶ場合、船などに乗る場合も救命具をつけること。

    なお、日本の水難事故数について警察庁の発表では、平成 12 年の数値で、事故総数 18,183 件のうち死亡 1,006 件、行方不明 28 件であり、魚釣り中の事故が 25 ~ 30 %を占め最多である。

     

    誘拐されたブランプトンの 13 歳の少女 BC 州で無事保護

     

    7月13日付ピール郡警察ニュース

    ( Japanese Social Services よりの情報提供)

     

    行方不明になったブランプトンの 13 歳の少女が、 BC 州で無事に保護された。親戚に誘拐されたと考えられていた少女は BC 州のサレ-地域で無事に発見された。

    7 月 12 日に少女の家族から、少女が失踪し、 30 歳になる男性のいとこと同道していると思われると通報があり、ピール郡内で捜査が開始された。

    捜査の結果、 2 人は BC 州のサレーにいる可能性が高いと考えられた。捜査にはサレー地区の RCMP( カナダ王立騎馬警察 ) 、バンクーバー警察および連邦児童失踪登録からの援助、ならびに GTA およびバンクーバー地区の報道機関が行った市民の協力要請が貢献した。

    東部時間午前 1 時 50 分、サレー地区のホテルの受付からの情報に基づき、 RCMP がホテルの近くにいる 2 人を発見した。少女のいとこである男は、 14 歳未満者の誘拐容疑で逮捕され、身柄を拘束された。容疑者の取調べは RCMP で行われ、捜査は、サレー地区で男が行った行為に関して行われる。

    被害者の家族は被害者と合流するため今日 BC 州に向けて空路出発する。

    ピール郡警察と RCMP は容疑者取り扱いについて協力を継続しており、捜査は、続行中だ。

    ピール郡警察は、本件の捜査に迅速で徹底した協力を行った報道機関に感謝している。

     

    JSS情報分析

     

    ここ数年に起きているいくつかの子供誘拐事件を思い起こすまでもなく、当地の警察は誘拐事件にきわめて敏感な反応を示す。掲出した記事はピール郡警察が第一報を発して数時間後に発表されたものである。

    犯罪統計によるとカナダ全土で年間に起きる児童誘拐、失踪事件は 2004 年を例にとると、警察に通報があったものだけで約 6 万7千件である。通報がなかったものの数は推測の域を出ないがその 3 ~ 5 倍あるというのが一般の見方だ。

    内訳は、全くないしはほとんど見知らぬ人物に誘拐されたケースは約 30 件で、両親の片方ないしは両方によるものが約 330 件だ。残りのうち圧倒的に多いのは家出で約 5 万 2 千件、彷徨が 670 件、事故、理由不明およびその他の事由が約 1500 件ある。なお、この数年他人ないしは両親による誘拐は減少の傾向にあり、一方家出や彷徨、理由不明の失踪は増加の傾向にある。

    日本の場合捜索願が出された総数は 2003 年に約 10 万件、内少年に係わるものは約 2 万 5 千件となっている。カナダと日本の人口比を考慮に入れると日本での発生が非常に少ないと見えるが、親による誘拐は誘拐と見なさないなど制度、捉え方、ないしは家庭内の事情を外に出さない文化などがあるために単純な比較は出来ない。

    以上で明らかなように、いわゆる狭義の誘拐事件は、当地でも必ずしも多発しているわけではないが、社会の関心は非常に高く、したがってマスコミも重要事件として取り扱う。

    一方、この種の犯罪は社会の強い関心を反映して、一方児童虐待、幼児ポルノ、ないしはコンピューターやインターネットを利用したハイテク犯罪と結びつき、司法機関の動きも、マスコミの報道も活発である。

    児童誘拐については関係各機関が協力体制をしいており、ハーグ協定 ( 日本は未批准 ) 国際協力も盛んである。カナダでは RCMP が中心になり発生の防止と、発生した場合の迅速な対応に力を注いでいる。

    特に狭義の誘拐が、発生してから数時間後以内の殺害につながるケースが多く、また国外脱出も多いため、初動捜査の迅速化と、一般市民の協力を可能にするアンバーアラート ( 事件の発生を道路標識やその他の一般市民の目に付きやすい方法で広域に掲示し、捜査情報を得やすくするシステム ) などが実施されている。

    また警察は子供に、見知らぬ他人の誘いに乗らないことを守らせ、危険を感じたら大声を出して周囲の注意を喚起させるなど実際的な助言をして発生を防ごうとしている。

     

    武器を用いた性的暴行で男を指名手配

     

    7月10日付市警ニュース

    ( Japanese Social Services よりの情報提供)

     

    市警性犯罪班は武器を使った性的暴行事件に関連して、犯人の男の身元特定に市民の協力を求めている。

    事件の概要は次のとおり:

    7 月 3 日日曜日午後 7 時ごろ、 22 歳の女性が仕事の面接のため、トロント市内のコーヒーショップまで男に会いに行った。

    リカルド・ジェイコブソンと名乗る男は、ニューヨークに本部があり、トロント進出を検討している国際的大企業の部長だといい、役員秘書の職種は広範囲の訓練と海外への出張があるといった。

    女性がコーヒーショップに到着し車の外で待っていると、車でやってきて女性のとなりに停めた。女性が男の車に乗ると、黒い拳銃を見せてドアをロックし、女性をローレンス東通りとブリムリー通りにあるトムソン・メモリアル公園まで連れていき、性的暴行をはたらいた。

    容疑者は東インド出身、身長 5ft ( 152cm )、 30 歳から 45 歳、ひげはなく、丸顔、太鼓腹、爪を四角く切っていた。アメリカンアクセントの流暢で歯切れの良い英語を喋り、ときどきブリティッシュアクセントからカナディアンアクセントまで変えていた。

    男は茶色いチェックのスーツ、黄色いシャツ、安物のデジタル腕時計を身につけていた。男の車は 4 ドア、黄褐色または金色の SUV 、年式は 1994 年から 1999 年頃、窓は黒い色つきガラスであった。

    男は大変しつこく、手口が巧妙であるため、トロント市警は女性のみなさんに注意を呼びかけている。男は女性をおびきよせるためには手段を選ばず、女性を危険にさらしている。

     

    JSS情報分析

     

    性的暴行事件は警察の発表、マスコミのニュースで度々現れる種類の事件である。警察は被害者などから通報のあったもののみしか扱えないが、犯罪内容から見て警察に通報されないケースが少なくないことを考えると実質の発生数は非常に多いと考えられ、十分な注意が必要なものだ。

    ちなみに市警発表 2004 年度の統計によれば、非暴力犯罪 ( 性的接触誘導、性的搾取 ) を含む性的暴力事件の年間発生数は約 3 千件、前年比較では約 8 %の増加である。人口 10 万人当たりの発生率は約 110 件である。なお日本の統計では該当すると考えられる犯罪は凶悪犯 ( 強姦 ) 、風俗犯(強制わいせつ)などに分散して取りまとめられているので、発生状況を直接比較することが出来ない。

    一方発表、報道される事件の発生状況は詐欺事件同様多様、かつ巧妙なものも多い。本件については武器が使用されている点、被害者取り込みの手口が巧妙かつ計画的と考えられるので取り上げた。

    被害を受けないためには「甘言に乗らない」、「単独行動はとらない」、「注意を怠らず、起こりやすい状況を避け」、「拒否の態度を明確にし」、「可能な限り周囲の注意を引く行動をとる」などがいわれている。