子どもの親権をめぐる問題について

平成27年11月19日

近年、国際結婚のカップルが増えてきています。そうした流れは、日本とカナダの間でも同様で、当館領事窓口にも国際結婚の届出、日加間のカップルの間に誕生した子どもの出生届のため来訪される方がたくさんいらっしゃいます。

しかしながら、その一方で、結婚生活で困難に直面したそれぞれ国籍の異なる父または母のいずれかが、居住地の法律を顧みることなくもう一方の親の同意なし に子どもを連れ去り、問題になるケースも発生しています。結婚生活が困難となり、離婚に直面する事態となったとき、子どもをどうするのか、特に将来にわ たって子どもの養育と監護をどちらが行うのか、といった問題は常に発生してきます。

今回は、特にカナダに居住される日本の親御さんにとって、子どもとの関係、子どもを連れての移動についてぜひ留意していただきたい点を述べたいと思います。

1. 実子誘拐罪の適用

カナダや米国の国内法では、父母のいずれもが親権または監護権を有する場合に、または、離婚後も子どもの親権を共同で保有する場合、一方の親が他方の親の同意を得ずに子どもを連れ去る行為は、重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています(注)。

例えば、カナダに住んでいる日本人の親が、他方の親の同意を得ないで子供を日本に一方的に連れて帰ると、たとえ実の親であってもカナダの刑法に違反するこ ととなり、これらの国に再渡航した際に犯罪被疑者として逮捕される場合がありますし、実際に、逮捕されるケースが発生しています。

国際結婚した後に生まれた子どもを日本に連れて帰る際には、こうした事情にも注意する必要があります。

(注)

  • カナダ:14歳未満の子の連れ去りの場合、10年以下の禁錮刑等を規定(刑法第282、第283条)。
  • 米国:16歳未満の子の連れ去りの場合、罰金若しくは3年以下の禁錮刑又はその併科を規定(連邦法Title 18, Chapter 55, Section 1204)。州法により別途規定がある場合もある。

2. 未成年の子供との旅行に関する注意事項

カナダに於いて、子の単独もしくは片親が子を連れて旅行する場合は、親の同意者(もしくは同行しない片親の同意書)等を携帯することが強く推奨(strongly recommend)されています。
同書類のひな形、その他必要書類等、詳細が以下のカナダ政府の関連サイトにありますので、ご旅行の前はご確認ください。
https://travel.gc.ca/travelling/publications/travelling-with-children外部リンク 
https://travel.gc.ca/travelling/children/consent-letter外部リンク
http://www.cic.gc.ca/english/helpcentre/answer.asp?qnum=1022&top=16外部リンク

3. 家庭問題に関する相談はお早めに関係団体・機関へ

日本人の親の中には、外国人の相手の方とのコミュニケーション・ギャップや価値観の違いによるストレス、虐待など深刻な事態に直面した場合の戸惑い、外国 における孤独感などから、ついつい日本に子供を連れて帰ってしまおうと思われる方も多々いらっしゃるかと思います。しかしながら、そのような行動には上記 で述べました多くのリスクが伴います。

当地には、家庭の問題、虐待に対する人権の面からの対応を行っている団体及び機関が多くあり、中には日本語で対応してくれる機関もあります。

また、あなたのお子さんは、相手の方のお子さんでもあります。問題の兆候が見え始めたら、速やかに各種団体・機関にご相談されることをお勧めいたします。

海外で生活されますと、個人生活も含め幾多の困難に直面されることも多々あるかと思います。しかし、思いがけず法律に違反し犯罪者となってしまいますと、その後の子供との関係にも様々な支障が出てきます。円満な家庭、円満な親子関係のために、上記の点を真剣に考慮していただきますようお願いいたします。